インタビュー

静かに熱く、滝沢市を支える地元愛にあふれた人々

滝沢市が募集している地域おこし協力隊「チャグチャグ馬コ(うまっこ)PRコーディネーター」について、前編の「世界でも類を見ない馬の行進「チャグチャグ馬コ」。発祥の地・滝沢市で今でも続くその理由とは」では、募集背景やチャグチャグ馬コの現状を、関係する方々に伺いました。

後編ではインタビュー場所を滝沢市交流拠点複合施設「ビッグルーフ滝沢」に移し、地域おこし協力隊が関わる様々な方に、滝沢市のヒト、コトについて話を聞きました。

農業のこと、馬コのことなら。たきざわグリーンワークス・工藤さん

たきざわグリーンワークス・工藤さん

たきざわグリーンワークス・工藤さん

滝沢市内で代々続く農家の7代目に生まれた工藤光さん(写真)は、当時勤めていた花屋を辞め、2010年に就農しました。普段は「助六園(すけろくえん)」という屋号で、ミニトマト、ブロッコリー、とうもろこし、大根、レタス、ねぎなど多品目の野菜を育てています。

滝沢市の20代から40代の若手農業生産者、約40人で構成される「たきざわグリーンワークス」では前会長を務め、現在も新規就農者のサポートや、地域ぐるみでの農産加工品の企画・販売に取り組んでいます。その仲間らと2019年から始めたのが、滝沢市の特産品であるスイカを、馬ふんたい肥で育てた「チャグチャグスイカ」です。将来的にはこの売り上げの一部を馬の飼育に還元させ、滝沢の馬事文化を支援することを目的としています。

実は工藤さんの実家は馬主でもあり、工藤さん自身も「チャグチャグ馬コ同好会滝沢支部」では、青年部に所属しています。現在は父親と一緒に馬の世話をしていますが、馬ふんたい肥の活用は、馬主の経済的、時間的な負担を目の当たりにしているからこその発想でした。

工藤さん「チャグチャグ馬コへの世間の関心が以前より低下しているのではないかと、危機感を持っています。まずは地元で、気軽に馬と触れ合える機会を増やしたい。チャグチャグスイカもそうですが、農家として、馬主としてできることに取り組みながら、チャグチャグ馬コを残していきたいと思っています。」

さらに「様々な経験をしてきた方に地域おこし協力隊としてきてほしい」と話す工藤さん、馬主や生産者との橋渡し役も担ってくれそうです。

先輩として頼りたいなら。地域おこし協力隊・佐藤さんと山谷さん

地域おこし協力隊・佐藤さん(左)と山谷さん(右)

地域おこし協力隊・佐藤さん(左)と山谷さん(右)

取り組むテーマは違うものの、先輩地域おこし協力隊が2名います。佐藤貴之さん(写真・左)と山谷幸大さん(同・右)です。佐藤さんは「IT新価値創造隊」として、山谷さんは「滝沢魅力発見隊」として、それぞれ2019年5月から着任しました。約10か月暮らしてみた滝沢市って、どんなところでしょう?印象を聞いてみました。

山谷さん 「魅力的な人がいて、産物にも恵まれて豊かなのに、それに気がついていない市民が多く、もったいないと思います。例えば滝沢市はスイカが有名ですが、りんごやほかの農産物も美味しいんです。そのことをもっと伝えたい、広めたいと思っています。」

佐藤さん 「確かに面白い人は多いですね。ついこの前、WEB業界に勤務経験のある同世代3人とここで(ビッグルーフ滝沢)ポッドキャストを収録したんですが、けっこう楽しくて、定期的に続けることにしました。気軽に集まるノリのいい人たちと、何かしたいと思った時にすぐ集まれる場があるというのもいいですよね。」

おふたりにはご自身の体験を踏まえ、地域おこし協力隊として行政の枠組みで働くことについて、普段から気をつけていることや心構えなどを話していただきました。

山谷さん 「地域おこし協力隊は所属組織が予め決まっていますが、その所属だけにとらわれず、広い視野を持って行動することが必要だと思います。そして、自分の発言や行動が相手にとって利益をもたらすものなのかどうか、ありがたいと思っていただけるような内容かどうか、よく考えてから発するように心がけています。」

佐藤さん 「組織横断的に動かないといけないことが多いので、求められるのはいわゆる“コミュ力”とチームプレーですね。でも職員の皆さんは話しやすい方が多い印象です。」

身近で相談したいなら。滝沢市職員・小木田さんと黒澤さん

滝沢市職員・小木田 美咲さん

滝沢市職員・小木田 美咲さん

滝沢市に隣接する盛岡市出身で、社会人1年目の小木田美咲さん(写真)は、経済産業部観光物産課に所属しています。チャグチャグ馬コPRコーディネーターは同じく観光物産課に所属するので、仕事上、顔を合わせることも多くなります。

小木田さん 「滝沢市には親戚もいて、馴染みのある土地でした。役所での仕事というのは硬い人間関係やおつきあいばかりだと想像していたのですが、入ってみるとどの組織も雰囲気がよくて親しみやすい方が多かったのに驚きました。
公務員を目指すなら滝沢市はお勧めだと聞いていましたが、本当にそうでした。地域おこし協力隊として来られる方もすぐなじめると思いますよ。」

黒澤高さん(写真)は市民環境部地域づくり推進課に所属しており、ビッグルーフ滝沢の運営を担当しています。チャグチャグ馬コPRコーディネーターと直接のかかわりは持ちませんが、ビッグルーフ滝沢は面白い取り組みが生まれている、ちょっと熱いスポット。知っておいて損はありません。

2017年度からビッグルーフ滝沢を会場にスタートした「情報発信STUDY」は、各界の講師からITや広報スキルを学び、磨く、市民講座。座学だけでなく宿題もあり、受講者が仕事で抱えている課題をそのまま持ち込んで実践に活かせる、本格的な学びの場でした。

滝沢市職員・黒澤 高さん

滝沢市職員・黒澤 高さん

2019年度は、滝沢市から世界で活躍する引く手“あまた”な人材を輩出することを目的に、「滝沢市ひと育てプロジェクト AMATAR STUDY(アマタ―スタディ)」を実施。課題解決能力の向上やプログラミングスキルの習得など、具体的なテーマが揃った3講座は条件さえ満たせば年齢不問で受講料無料。こうしたユニークで本気の人材育成を企画しているのが、黒澤さんです。

黒澤さん 「世の中を変えることができる仕事だと思って、この職に就きました。この仕事の最終的な成果というのは、自分の娘が大人になって、滝沢を居心地がいいと思うかどうか。子供たちに、愛とネットワークと生きる武器を与えるのが大人の役目だと思うんです。だからビッグルーフ滝沢では、若い人も来やすいような仕掛けづくりに取り組んでいます。」

「既成概念を壊したかった」と話す黒澤さんは、ビッグルーフ滝沢の椅子やテーブルといった備品導入にもあるこだわりを見せました。公共施設の備品は公募で決めるのが一般的ですが、そこに「みんなで創ること」を条件に加えたのです。大手メーカーからも様々な案が集まる中、採択されたのは、次に話を聞く松森木工所の松森さんでした。

面白い人とつながりたいなら。松森木工所・松森さん

滝沢市内で松森木工所を営む松森政仁さん(写真)は、Uターンして家業を継ぐことを考えるようになってから、地域とのつながりを意識し始めたと言います。現在は、木工職人として受注家具を製造・販売するかたわら、「eye2→weaveたきざわ(アイアイウィーヴ)」と「iMA5(アイマファイブ)」という、地元愛にあふれた活動も主宰しています。

「eye2→weaveたきざわ」は、写真を通じて世界中に滝沢ファンを増やすことを目的とした取り組みで、滝沢産りんごを使った食のイベントも定期的に行っています。「iMA5」は空き家になっていた商店街の一角をリノベーションしたコミュニティスペースで、「情報発信STUDY」から派生した小さな勉強会や、写真展などのイベントが不定期で行われています。今後はシェアオフィスとして、よりいっそう人と人をつなげる空間としても活用していくそうです。

松森木工所・松森 政仁さん

松森木工所・松森 政仁さん

松森さん「今までは、“地域とつながる”というと、仕事以外には消防団や商工会に入ることくらいしか思いつきませんでした。でも今の滝沢には、何かやりたいと思って行動していると、同じ関心を持つ人とつながれる機運があるような気がします。

地域おこし協力隊として来られる方は、編集力があると、滝沢をもっと面白がれると思います。ここにいる人たちのことや地域の歴史に目を向けて、いろんなことに気づけると、今あるものを活かして何かをクリエイトできる。よそからやってきた、というご自身の立場も活かして滝沢を楽しんでほしいですね。」

みなさんのインタビューを通じて感じたのは、居心地の良さでした。食べ物がおいしくて景色がいいのはもちろんですが、人に恵まれ、さらにサードプレイスも備えた環境は、地方においてはそうそうないかもしれません。滝沢市には仕事でもプライベートでも頼れる仲間がいて、「みんなで学ぶ、創る」という下地ができつつあると感じました。

(岩手移住計画 藤野)